8月29日、ここ数日にも増して暑かったが、カラリと晴れた青い空。不快には感じない。大阪駅から少し離れたホテルまで歩いた。台北の旧友との十数年ぶりの再会。正確に何年だったかは覚えてない。
お互いの転居が災いして長らく音信不通。一年ほど前のブログで彼のことを書いた頃から連絡をとる方法を探していた。僕が台北に住んでいた頃から彼が熱く語っていた「映画を撮りたい」という夢を実現させていたことをインターネットで知った。しかし連絡先がわからない。ネットを探しまわり、いろいろ回り道して彼が経営する塾のE-mailアドレスを見つけた。
約束より少し早くロビーに入ると、チェックインを終えたばかりの彼と目が合った。昔と変わらない満面の笑みと熱いハグ。台湾人だがアメリカ育ちだから、こういうところは全くアメリカンだ。2年前に結婚していて奥さんと一緒だった。
暑いだろうからと探しておいた蕎麦屋で、すだち蕎麦を食べながら、積もる話を。奥さんがiPhoneで一才の娘さんの写真をみせてくれた。二人とも娘さんがかわいくて仕方がない様子。幸せそう。
食事を済ませ、中之島の国立国際美術館へ。束芋というアーティストの不思議な世界観のアニメーション作品と、横尾忠則さんのポスター展。彼はどちらも子供のように目を輝かせて見ていた。東京から新幹線で着いたばかりのところを連れ出したから「疲れてない?」と何度か聞いたが「全然」と、脇目もふらず作品に見入る。この集中力はどこから来るのか?流石に奥さんはお疲れの様子だったけど(笑)。
横尾忠則さんは映画のポスターが新旧たくさんあり、その中に知っている名前を見つけては反応する。彼は自分の作品を撮っただけでなく大学で映画論を教えている専門家だから、日本の映画人も普通の日本人よりよく知っている。閉館のアナウンスを聴くまでたっぷり三時間強、楽しんでくれたようでよかった。
彼が撮った映画は「岐路天堂 "Detours to Paradise"」、台湾で「忘れ去られた存在」である外国人労働者にスポットを当てた作品。"Sincerely Yours"という別タイトルでシンガポール国際映画祭のオープニングフィルムに選ばれたり、ニューヨーク近代美術館で上映されたりと、一定の評価を得たが、商業的には成功しなかった。だからDVD化も断念したそうで、僕は彼の作品を見る事はできない。音信不通の十数年が悔やまれる。
でも、再会できて本当によかった。彼の力強い、前向きなお人柄は昔と全く変わってない。忙しく働いて資金を貯め、イギリスで映画論を勉強し、台湾で教え、満を持して製作した彼の映画は不発に終った。でもそれにめげている様子もなく、また次の夢を見ているようだった。
コメント